この本はタイトル通り新選組の藤堂平助を主人公にした物語で、2000年に発売された「裏切者」という本の改訂版です。
藤堂と土方歳三の二人を中心に物語は進みます。
藤堂と土方、というのが新鮮でした。やはり藤堂というと、山南さんとか伊東先生とのつながりの方を思い浮かべるので。それに「燃えよ剣」などの印象もあり。
土方が藤堂の初めて人を殺す現場に居合わせてしまって、それをきっかけに藤堂は試衛館に出入りするようになります。
藤堂はどんどん土方に惹かれていって、土方も藤堂に対して優しい。すごく優しい。そしてくさいセリフも吐く。読んでるこっちも恥ずかしくなるけど、それが快感でもある(…)。
藤堂は結局土方を裏切ることになるのですが、分離に際しての藤堂の思いがすごくよく描かれていて、平助びいきの私としては嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。分離が、新選組のあり方に対する不満(山南さんのことを含め)や伊東との師弟関係が原因になってるという描き方も他の作品では多いと思うのですが、ここではそれよりも、藤堂の国の行く末を思う気持ち、思想、革命!みたいなのが前面に出ていて、いいなあ、と思うのです。
でも、そうした志と土方ら仲間たちへの思いとの間での苦悩があり。そういうところも、すごくよく表現されていると思います。
特に分離直前の、「藤堂、俺が怖いか」のシーンは・・・すごい。土方歳三。迫力と色気で迫る、みたいな(違う)。
本当にこの本はどこもかしこもよくて、つっこみどころ(いい意味での)万歳でここに書ききれないのです。
中でも永倉氏がいい!平助は永倉さんのこと「新さん」って呼ぶんですが、なんだか、甘酸っぱい!なんだかんだ言って平助に甘い永倉さん。甘味処の場面とか、「女がいるぞ」騒動の場面とか!(褌…)思わずきゃいきゃいしてしまいます。所々で新さんは問題発言をしていると思う。「お前のいない京は…」とかとか。ああもう、ドキドキが止まらない!
あと、山南さんとか、伊東先生にもときめきます。
先生が分離を平助を説得する場面も大好きです。「藤堂」って呼び捨てにするところとか。つーか、連れこみ宿に呼び出すってどうよ!?ってなかんじもあり。あと、二人で坂本竜馬に会いに行く場面とか。先生は素敵だ。先生は優しい。先生は美しい。この二人の会話がいいなーと思う。そして坂本先生もすてきなのでした(平助のあこがれ)。
あと、あと、斎藤一!このキャラ!!!(「あいよ」が口癖!「土方の旦那」…)
御陵衛士になってからの二人は結構仲がよいのです。斎藤といるときの平助はかわいいぞ、このやろう!夏に二人で鞍馬に行ったりね。それから、斎藤が新選組に帰るってときに二人で河原を散歩する場面がまた…。さらに油小路の夜に、あああ…。あの斎藤が、斎藤が…ってかんじで、胸きゅんです。
とても不真面目で不可解な感想になってしまいましたが、なんかもうバイブルみたいな本です。平助がちょっぴり乙女なのもご愛嬌てなかんじで。いやもう、真面目に胸にぐぐっときます。ぐぐぐっときます。平助の生い立ちに関する描写も含め、その24年(23年)の短い生涯が儚く、しかし力強く胸に響くのです。
物語は「歳三往きてまた」に続きます。
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